お気の毒さま、今日から君は俺の妻
澄花のふっくらとした唇に触れる龍一郎の目は、次第に色っぽく濡れ始め、澄花のどんな反応も見逃すまいと、まるで炎のように燃えている。
「ま、まって……」
まさか車の後部座席でそんな雰囲気になるとは思わなかった。
一瞬身を固くした澄花だが、龍一郎が待ってくれる気配はない。それどころかいつの間にか澄花の体は後部座席のシートに押し付けられ、隣に座っている龍一郎が覆いかぶさるように体を寄せた。
龍一郎の手が、唇と腰を撫でて、澄花の反応を引き出そうとしている。
「あっ……」
ただ体のラインと、唇をなぞられているだけだ。
けれど龍一郎の指先は実に官能的で、澄花は羞恥で顔を赤く染める。
(恥ずかしい……!)
だが、売ると言ったのは自分で、買うと言ったのは龍一郎だ。
だったらこれは売買契約のもと、丸山夫妻を助けるために、彼に支払われる対価なのだ。
(いったいなにをされるんだろう……怖い……けど、まさか命までは取られないはず……なにをされたって、我慢するんだ……我慢……我慢を――)
必死でそう自分に言い聞かせた澄花だが――。