お気の毒さま、今日から君は俺の妻
「目を閉じなさい」
龍一郎の声は低く、落ち着いていて、やはり彼は人に命令することに慣れているのだと澄花は思った。
言われた通り目を閉じると、
「そう……それでいい」
龍一郎の吐息に近い小さな声が、澄花の唇に触れた。
最初は触れるだけのキスだった。
本当に――春樹以外の男性とキスをしたことがなかったので、澄花は細い肩をびくりと震わせて、シートの上で跳ねてしまった。
「大丈夫だ……私は君を傷つけたりしない」
その反応を見て、一度離れていた龍一郎はゆっくりと上半身を丸め前かがみになると、もう一度澄花の唇に口づけを落とす。
そして重ねたままの唇が開き、龍一郎の柔らかい舌がゆっくりと澄花の口の中に入ってきた。
(甘い……味がする……)
龍一郎は、なにかフルーツでも食べた後だったのだろうか。
果実のような甘さに澄花は驚いたが、龍一郎の舌は澄花の口の中をゆっくりと動き回る。まるでなにか美味しいものでも探しているような、そんな雰囲気だ。
「んっ……んん……ぅ」