お気の毒さま、今日から君は俺の妻

　澄花の唇から思わず吐息が漏れるが、そんな吐息すら龍一郎は飲み込んでしまう。
　両腕を澄花の腰に回し、引きつけ、むさぼるように澄花を味わう。舌は歯並びを確認したと思ったら今度は口蓋をなぞり、舌を丹念に含む。
　次第に唇から体全体にふわふわと、快感が広がっていく。

　そうやってどれくらい長い時間、キスしていたのか――。




「大丈夫か」


　ほんの少し気遣うような声色に澄花は声の下方向を上目遣いで見上げる。


「あ……は、はい……っ……」


　はいと応えはしたが、どうやらかなり息が上がっている。
　心臓は胸の中で壊れたように跳ねまわっているし、耳の下でドクドクと全身に血が流れる音がした。


「……ご、ごめんなさい……」


　澄花は息を整えながら、無我夢中で手を伸ばし、龍一郎のスーツの腕をつかんだ。