お気の毒さま、今日から君は俺の妻
(いや、誰だって愛想笑いくらいするだろうけど……)
葛城龍一郎は、それとも違うような気がするのだ。
「そうかそうか!」
返事が気に入ったのか、俊樹は「ありがとう!」と朗らかに笑い、そして尚美に肩を支えられながら、エレベーターへと向かっていった。
「あの、私はお客様をお見送りしなくてよかったんでしょうか」
式が終わった後、最後まで見送る必要があると思っていたのだが、龍一郎は澄花を部屋に戻してしまった。彼ひとりでいままで、一時間ほど対応していたことになる。
(すごく疲れていたから助かったといえば助かったんだけど……)
妻として最初の仕事だったのではと、思ったのだった。
「構わない」
真顔に戻った龍一郎はあっさりと澄花の問いを却下すると、そのまま腕を澄花の腰に回して、引き寄せた。
「親戚付き合いなど適当でいい」
そして澄花の額に、唇を寄せた。
「君の仕事は、私のそばにいること。ただそれだけだ」