お気の毒さま、今日から君は俺の妻

(側にいること……それだけ? 別になにもしなくていい。ただ側にいるだけでいいと言うのなら、人形とどう違うのだろう)


 澄花はそんなことを考えたが、実際龍一郎はそんな自分を求めているのかもしれない。
 栫澄花という人形が、欲しかったのかもしれない。
 だが彼が支払ったものを考えれば、自分ひとりが我慢することなど大した問題ではない。


(私の気持ちなんか、どうでもいいこと……)


 丸山夫妻の晴れやかな笑顔を思いだして、澄花はぎゅっとこぶしを握った。


「ドレスは脱いでしまったんだな」


 彼が話すと吐息が触れる。


(くすぐったい……)


 澄花は抱き寄せられた体をどう動かしていいのかわからず、直立不動のままだった。
 ぎこちなくうなずいた。


「はい……この部屋に戻ってすぐに」


 今の澄花は、ベージュのノースリーブタイプのワンピース姿だ。シンプルで上品なひざ丈で、このままどこにでも出かけられる。

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