お気の毒さま、今日から君は俺の妻
ちなみに龍一郎が言っている、お色直しで着たローズピンクのドレスは、ふわふわとしたシフォンが何段にも重ねられたオーガンジーにビーズが縫い付けられており、胸元はハートカットのプリンセスラインという愛らしいデザインだった。
(ひさしぶりにあんな色の服を着た……)
もはや自分は春樹のために黒い服を着ることはできない。そう思うと胸が苦しくなるが、これも自分で選んだことだ。
「私のための花嫁だというのに、残念だ。もっと堪能したかった」
龍一郎はそんなことをつぶやき、それからゆっくりと、唇を額に押し付けられる。
ちゅっと音がして、そのまま龍一郎の唇が耳元へと移動したかと思ったら、耳たぶをはむ。
心臓が跳ねた。
「きゃあっ……!」
まさかそんなところを嚙まれると思わなかった澄花は悲鳴をあげ、龍一郎の胸をどんっと突いて距離を取った。
「なにするんですかっ……って、あ……」
龍一郎は微かに目を見開いて、少し驚いているようにも見える。
「いや、あの……ごめんなさい……ビックリして……」
彼が口づけた耳が熱い。
澄花は顔を真っ赤にしたまま、手のひらで耳を押さえた。
「ごめんなさい……」
もう一度謝罪の言葉を口にすると、
「いや、私こそすまなかった。驚かせるつもりはなかった。私は君を決して傷つけたりしないから、その一点だけは安心してほしい……」