お気の毒さま、今日から君は俺の妻

 ちなみに龍一郎が言っている、お色直しで着たローズピンクのドレスは、ふわふわとしたシフォンが何段にも重ねられたオーガンジーにビーズが縫い付けられており、胸元はハートカットのプリンセスラインという愛らしいデザインだった。


(ひさしぶりにあんな色の服を着た……)


 もはや自分は春樹のために黒い服を着ることはできない。そう思うと胸が苦しくなるが、これも自分で選んだことだ。


「私のための花嫁だというのに、残念だ。もっと堪能したかった」


 龍一郎はそんなことをつぶやき、それからゆっくりと、唇を額に押し付けられる。
 ちゅっと音がして、そのまま龍一郎の唇が耳元へと移動したかと思ったら、耳たぶをはむ。

 心臓が跳ねた。


「きゃあっ……!」


 まさかそんなところを嚙まれると思わなかった澄花は悲鳴をあげ、龍一郎の胸をどんっと突いて距離を取った。


「なにするんですかっ……って、あ……」


 龍一郎は微かに目を見開いて、少し驚いているようにも見える。


「いや、あの……ごめんなさい……ビックリして……」


 彼が口づけた耳が熱い。
 澄花は顔を真っ赤にしたまま、手のひらで耳を押さえた。


「ごめんなさい……」


 もう一度謝罪の言葉を口にすると、

「いや、私こそすまなかった。驚かせるつもりはなかった。私は君を決して傷つけたりしないから、その一点だけは安心してほしい……」


< 84 / 323 >

この作品をシェア

pagetop