お気の毒さま、今日から君は俺の妻
それから龍一郎が連れてきてくれたのはホテル内にある高級フレンチレストランだった。
エレベーターを降りてレストランに入ると、大理石の床にものすごい量の薔薇の花びらが床に敷き詰められている。
(花……?)
ずいぶん凝った演出だなと思いながらその花びらを眺めていると、
「葛城様、お待ちしておりました」
黒服のスタッフにうやうやしく出迎えられてそのまま奥へと通される。そこで澄花はなにげなく顔をあげて、
「えっ!?」
思わず驚きの声を上げてしまった。
なんとテーブルはすべて撤去され、フロア自体が色とりどりの花とキャンドルで飾られている。キラキラと輝くバルーンやリボンが部屋のあちこちに飾られていて、まるでおとぎの国の不思議な庭をそのまま持ってきたような、メルヘンな情景に澄花は息を飲んだ。
「あ、あの、これは? とってもかわいいですけど……、あ、もしかして貸し切りなのですか!?」
「ああ」
龍一郎は静かにうなずく。
「ルームサービスでもよかったんだが、それでは少し味気ないだろう。今日は君が私の妻になった記念すべき日だ」
そして龍一郎は澄花の左手をうやうやしく持ち上げると、なんと指輪の上ににキスをした。