ただ、そばにいたいだけ。
妙にきょどってしまった。
緊張しすぎ、わたし。
口から心臓が飛び出るとはまさにこのこだと思った。

変だと思われてるかな、大丈夫かな、……。

不安がぐるぐる頭の中で回る。



一目見て、今日の彼に見惚れない人はいないだろう。
制服姿とはまた違う、その感じ。
無造作にセットされた髪も、オシャレに気崩してる服も、かっこいいってこの人のための言葉なんじゃないのかって思った。


現に、すれ違う人がみんな見てる。
それが余計に、わたしに住む世界が違うことを思い知らせる。



妙に切ない気持ちになっていると、




「はやく」


ぐいっっ



「キャッ」


新くんがわたしの腕をひっぱって手を繋いだ。


「え、あ……新くん、手…」



「嫌なの?」


ドキドキドキドキ。
たぶん、わたしの心臓今までで1番うるさい。
絶対、絶対、すごいことになってる。

新くんにとっては手を繋ぐなんて、日常茶飯事のなんでもないことなのかもしれない。
……だけど。


「い、嫌じゃない」


今、すごい嬉しい。
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