ただ、そばにいたいだけ。
ふと周りを見ると、いつのまにか人気のない静かなベンチに座っていた。
水族館のすぐそばに、こんな穏やかな場所あったんだ。
何も会話はないけど、手に握りしめているペンギンが、新くんの存在をさらに大きくしたような気がした。
チラリ、隣を見ても本当に何を考えているかわからない、いつものかっこいい顔。
ずっと好きだった人と、こうやって隣にいれることが本当に信じられない。
と、
幸せすぎて涙をこらえているわたしに、新くんが爆弾投下した。
もう一度いうが、新くんは本当に、掴めない人だ。
「キスする?」
……………………はい?
今なんて言った?
驚き通り越して、無になってしまったわたしを新くんが少し笑いながら見ている。
当の新くんは、なんとでもないといったような顔。
すると少し笑って(正確にはにやっと)、
「なんも言わないならするけど」
こう言った。
いつの間にか近づいているその距離に、その端正な顔に、わたしは動けないでいた。
きっと今、アホみたいに真っ赤だと思う。
どうしたらいいのか、わからない。
けど、有無を言わさず近づく唇。
「んっ………はぁ」
一瞬離された唇、だけどまたすぐに塞がれる。
知らなかった。
何もかも、はじめてのことだった。
「んぅ……ぁっ……くる、し…」
わからない、わからない、大人のキス。
初めてで…どうしていいのかわからない。
必死で新くんの服を掴んだ。
息ができなくて、無意識に生理的な涙が目に浮かんだ。
「ヘタクソ、鼻で息しろよ」