ただ、そばにいたいだけ。




後頭部に回される手。





明らかに慣れている、キス。




「ん……ふっ…………ぁっ…や…」




恥ずかしいのと、苦しいのと、嬉しいのと、いろんな感情がごちゃごちゃになって頭が真っ白になった。




ゆっくりと離れる唇。





「ふっ…赤すぎだろ」




キスでさえ心臓バクバクだったのに、その笑顔のおかげでバックンバックンだった。


わたしが夢見てきた、理想だった初キスとはまったく違う。
だけど、新くんのキスは、わたしの心臓を怖いくらい速くさせた。
理想とかそんなの、どうでもいいってなってしまった。



新くんが親指で、わたしの目に浮かんだ涙を拭う。目があった。



「あ、あらたくん…今日ずっと、ありがとう…」



照れながら伝えるわたしとは正反対で、何も思ってなさそうな新くんは、




「…別にいい」




これだけ言って立ち上がると、『行くか』と言って歩き出した。



< 59 / 64 >

この作品をシェア

pagetop