ただ、そばにいたいだけ。
後頭部に回される手。
明らかに慣れている、キス。
「ん……ふっ…………ぁっ…や…」
恥ずかしいのと、苦しいのと、嬉しいのと、いろんな感情がごちゃごちゃになって頭が真っ白になった。
ゆっくりと離れる唇。
「ふっ…赤すぎだろ」
キスでさえ心臓バクバクだったのに、その笑顔のおかげでバックンバックンだった。
わたしが夢見てきた、理想だった初キスとはまったく違う。
だけど、新くんのキスは、わたしの心臓を怖いくらい速くさせた。
理想とかそんなの、どうでもいいってなってしまった。
新くんが親指で、わたしの目に浮かんだ涙を拭う。目があった。
「あ、あらたくん…今日ずっと、ありがとう…」
照れながら伝えるわたしとは正反対で、何も思ってなさそうな新くんは、
「…別にいい」
これだけ言って立ち上がると、『行くか』と言って歩き出した。