ただ、そばにいたいだけ。
風邪
「で?キスまでしたわけ」
「いや、あ、そ、そうです…」
なんでこんなにきょどってるかって、玲さんの威圧感が凄まじいからだ。
昨日のデートのことを話した、キスのことは黙っておこうと思ったのに…あっさりバレた。
「あんたね、わっかりやすいのよ。キスしましたってオーラでまくり」
…だそうです。
キスしましたオーラってなんなの。
想像したら、恥ずかしくなってきた。
新くんから貰ったペンギンをいいでしょーといいながら玲に自慢してみたりもした。朝一番に。
あろうことか、目の前に座る玲はというと終始、へぇとかふーんとか女版新くんみたいな発言を繰り替えすだけで、まったく興味はなさそうだった。
「で?」
「え?」
思わず聞き返す。
一つも抜けることなく、玲に話したはずだ。
「…はる…まさか、それで終わり?」
「え、うん。そうだけど」
至って真面目に答えたのに、睨まれた。
本当にわたしの親友は怖い。
深いため息をこれでもかというくらい吐いている。
「物くれた、キスした、これ普通のことだからね」
「で、でも…!「だいたいね、あんた遊ばれてんのよ。傷つく前に止めた方がいいよ」」
わたしの言い訳は見事に打ち砕かれた。
「だって、だって、だって……優しいもん、玲にはわかんないもん」
また何か言われると思って、玲の顔が怖くて見れない。
玲の言っていることは、ほんとに正論だ。
叶わないとわかっている恋に、諦めなければいけない気持ちに、突っ走っているのは他でもないわたしだ。
俯いてるわたしの耳に入ってきたのは、予想と反する玲の優しい声だった。
「はる」
「……」
「別に意地悪しようと思って言ってるわけじゃないよ。心配なの」
無性に、泣きたくなった。
あぁ、やっぱりわたしの親友だ。
新くんと同じくらい大好きな人だ。
なんだかんだいつもわたしの見方をしてくれる。