❆LastChristmas❆
ピッ

タイムカードを押して、出たその時


「…お疲れ。」


副社長は立っていた。


「副…」


いつもお疲れって言って待ってくれていたの嬉しかった。


でも…


その時私は円城寺さんの言葉を思い出した。


【婚約者の円城寺彩織です。
いつものホテルで待っていると…】


そして…。私は副社長を突き放した。


「今日は…」


「副社長」


「どうした?」


「もう、ここには来ないで下さい。」


「は?」


「…あなたは私の恋人でもないし…
こんな事されても迷惑です。」


わざと冷たく突き放した。


(しまった!言い過ぎた!)


後悔したその時、


「…そうだよな。」 


…え?

副社長が口を開いた。


「恋人…じゃないもんな…俺達。」


「副…。」


「今日は帰るよ…。」


「副社…」



「美月、今まで困らせて悪かったな。」


そう言って副社長は、帰って行った。


段々と小さく遠くなっていく社長の背中を、私はただ見つめるしか出来なかった。 


「…何で私…。」


…最低だ。


副社長にあんな顔をさせた…。 


責めるつもりなんてなかったのに…。


…でも


婚約者がいるのに…。

これ以上、一緒にいれないよ…。
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