❆LastChristmas❆
『…はい。』

『…亜紀?』

…久しぶりに聞く兼君の声。


その瞬間、緊張が走った。

『…良かった。出てくれた。』


『…今更何の用?』


『…やっぱ怒ってるよな。』


『…当たり前でしょ!何なのよ!今更!』


あたしはつい、怒鳴ってしまった。

『…ごめん。』

『…え?』

『あの、クリスマスの事ずっと謝りたかったんだ。』

『…どうして?』

『…亜紀にずっと隠してた事があるんだ。』

『…隠してた事…?』

『今年のクリスマス、アメリカに行くんだ。』

『アメリ…カ?』

兼君は、T商業で働いている。

『俺、転勤でアメリカに行く事になったんだ。
それを今までずっと亜紀に隠してた。
これから遠距離になると思ったら…。
俺と別れた方が良いかもと思って…。
勝手過ぎだよな、俺…。
ごめん…。』

『…何それ。だったら何で言ってくれなかったの!』

『…ごめん。亜紀に辛い思いさせたくなかったんだ。』

『…勝手過ぎだよ…兼君…。』

『…ごめん。』



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