嫌い。だけど好き。
「え・・・?」
晃哉君が驚いた表情をしている。
私は想いが溢れて、考えもなく言ってしまった。
『晃哉君の方が・・・ずっと かっこいい』
でも・・・訂正する気にならない。
嘘じゃないから。本当の事だから。

真っ直ぐ晃哉君を見る。
「あ、えと・・・ありがとう・・・?」
どうしたらいいか分からないって顔に書いてますよ。
すみません。困らせた表情をさせてしまって。

でも・・・困った顔も 眠そうな顔も・・・ニカッと笑う笑顔も・・・。
あなたは何もかもが綺麗ですね。

欲がないから・・・。
自分の家の存続。
金のための結婚。
親の無理やりな未来。

私達 恵まれすぎた家に生まれた者は、皆・・・欲まみれ。自分は沢山持ってるのに、もっともっと欲張る。
この世界は・・・お金はあるけど人の気持ちは関係ない。暖かくないんだ。
自分の事ばかり考えてしまう・・・。

「なんでもない。ごめんなさい。
1限目、参加出来なくなっちゃって・・・」
「いーのいーの!俺も結愛さんを元気づけた かったしな~」
両手を頭の後ろに組んで またニカッと笑う晃哉君。
ほら・・・また そうやって、見惚れさせようとする。

「それじゃあ帰りましょうか」

私達は同じタイミングで教室に戻った。
晃哉君は、先生に「一条さんが お腹痛そうだったので保健室に連れて行きました」と言った。
初めて・・・先生に嘘をついた。こんな日も、悪くないんじゃないか と思った自分がいた。
みんなに見られないよう、小さく私にピースする晃哉君。ニカッと笑って・・・。
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