嫌い。だけど好き。
「ふふっ・・・!晃哉君といると、怖いものなんてない・・・!」

「そーだろ!てゆーか!さっきの結愛さんの声、すごかったなぁ~
どっから出してんの?」

「そ、それは・・・触れないでください」
思いっきり走りながら笑い合う2人。
でも、そんな笑顔も一瞬で消えた。


キキッ
車が私達の目の前に止まった。
・・・お父様の車だ。

「結愛、何をしている。早く戻りなさい」
車の中には有栖川さんもいた。
お父様の声は、冷静だけど冷静じゃない。
怒号をあげる寸前だ。

怖い・・・足がすくんでしまう。
きゅっと晃哉君の服を掴んだ。

「結愛!私の命令を聞けないのか!
お前は 一条の名を持ち、由緒ある家系の跡取りなんだぞ!」
車を降り、私に怒鳴り声を上げるお父様。
こんな お父様・・・初めて見た。

晃哉君の服を掴む手が強くなる。

「お前は有栖川家と結婚し、子を生むんだ!そして その子が また、一条を継いでいく。私達の家系を潰す気か!」

「結愛・・・僕の婚約者なんだから・・・
僕に相応しい振る舞いをしてほしいな」
有栖川さんも車から降り、言った。

ブチッと私の頭の奥で何かが切れた。
その時、恐怖は消え、怒りで震え上がってくる。

晃哉君の服を掴んでいた手を離し、お父様達の方へ足を運ぶ。
晃哉君が 私を1回呼んだけれど、それどころじゃなかった。

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