嫌い。だけど好き。
あ・・・あ、れ?
痛くない・・・。刺されてない?

目をそっと開ける・・・。
見たくない光景が目に入ってきた。

「こ、晃哉君・・・!!!!」
スーツの男が私にナイフを向けているのを、晃哉君が後から手で止めていた。
晃哉君の両手からは血が沢山 流れている。

スーツの男は 驚いたようにナイフを止めた晃哉君の手を見て、晃哉君は 痛そうに顔を曇らせた。

カラン と床に落ちるナイフ。
「ッ・・・!」

「・・・へ、へ!お前が手を出すからだろ!」
動揺しながらも嘲笑うスーツの男。
晃哉君は苦しそうに床にペタンと座った。

バチン!・・・
最近、2度目のビンタ。
次の相手はスーツの男。
私は涙が止まらなかった。
スーツの男は「いって!」と言いながら私が 叩いた頬に手を当てている。

ピーポーピーポー・・・
私に殴りかかろうと 走ってくるスーツの男。でも、サイレンの音を聞いた瞬間、ペタンと床に座り込んだ
警察・・・?救急車?
どちらでもいい。晃哉君を助けて・・・。
私は 晃哉君の手を両手で床につけないように支えた。
涙が止まらなかった。晃哉君・・・。
声を出そうとしているけれど、声が思うように出ないんだろう。
苦しそうな声しかきこえない。


「警察だ!」
ドタドタドタドタと沢山の警官が入ってくる。スーツの男の顔からは生気が抜けた。
・・・警察の後ろには驚いたような表情をした、お父様と お母様がいた。

「お父様!晃哉君を助けて!」
床に沢山のヤンキー。生気の抜けた顔をしているスーツの男。
沢山の光景に頭が追いつかないのか、2人とも唖然としていた。

「お父様ぁ!」
半分 叫びながら言った。

「あ、あぁ・・・。救急車、お願いします」
お父様が私達の所に救急隊を呼んだ。

晃哉君は、その間に気を失っていた。
私は 晃哉君の手を 離さなかった。
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