この恋が実るなら


その日の仕事帰り、私は山口さんを誘ってご飯に出掛けた。


あの時以来、私は一旦自分の恋心は胸の奥にしまって、山口さんの恋路を応援することにしたのだ。


寧々さんの変化は、山口さんが想いを伝えるチャンスかも。


酎ハイを、ゴクリと喉に流し込みながら口を開く。


「絶対、何かありましたね。今日何回ため息ついてたか、わかります?」


「確かに元気なかったけど、藤谷、ため息の数まで数えてたの?」


そう言ってビールに口をつけながら、ちょっと呆れ笑いの山口さん。


「なんと、48回です!」


マジで数えてたのかよ、とお腹を抱えて笑われてしまった。


山口さんは、あの抜け殻状態からすっかり復活して、よく笑うようになった。


最近、時々こうして2人で出かけては、寧々さんに告白する作戦を立てている。


「喧嘩とかしたところに漬け込むのは、嫌なんだけどな。」


「でも、弱ってる寧々さんを励ますっていう名目で、話を聞くとか。


いきなり好きだって言わなくても、優しく安心させてあげられる印象を与えられたら、寧々さんも山口さんの事頼ってくれるかもしれませんよ。」


「そういうもんかなぁ。」


以前までの余裕ない感じがなくなって、最近の山口さんは何だかのんびりしているから、私の方が一生懸命になってしまってる。


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