この恋が実るなら
嫉妬と不安 蒼一郎side
あの日、意を決してしたプロポーズに寧々は返事をできず、そのまま気まずい雰囲気のまま僕の部屋を後にした。
指輪は、テーブルに残したまま。
もちろん、即答は期待していなかった。海外赴任の話もあったし。
でも、付き合い始めて3カ月、僕にとっては寧々との相性はいろんな意味で最高で、寧々への想いは募るばかりで。
うまくいく未来しか、想像していなかった。僕のプロポーズを受けて、僕の妻として、フランスで一緒に暮らす。
僕は好きな仕事をして、そばにはいつも寧々がいてくれて…。
そんな未来が、幾分か自分本位だったと気付かされたのは、寧々が何も言わずに部屋を出ていった後だった。
それでも、落ち着いて、冷静になればいい返事をくれるはずだと思っていたのに…。
さっき見たばかりの光景が、頭から離れない。不安に押しつぶされて吐きそうだ。
僕が寧々と正式に付き合い始める前、山口は店に来て僕に宣戦布告をした。
それでも寧々は彼の好意には全く気づかないまま、僕のものになったから、もう諦めたものばかりと思っていたのに。