この恋が実るなら


不安で高まる心臓の鼓動を抑えながら、寧々の部屋へ向かう。


今すぐ彼女に会いたい。
会って抱きしめたい。抱きしめて、僕のものだと安心したい。


アパートに到着して見上げると、寧々の部屋に明かりが点いてる。
帰って来てるんだ。


でも入り口まで来たところで、ふと不安がよぎる。
もし部屋に山口がいたら?
何もかも、終わってしまうのか…。


それでも、今、会いに行かなきゃならない。気持ちを落ち着かせるために深く深呼吸をして、部屋のインターホンを押した。



ドアが開くまでの少しの間が、ひどく長く感じる。


ガチャ、と音がしてドアが少し開くと、驚いた顔の寧々が現れた。


「蒼一郎…さん?どうしたの、こんな時間に。今日は家に帰るって…」


言い終わる前にドアから押し入り、後ろ手で鍵を閉めた。
その場で寧々を抱きすくめる。
戸惑っているのが感じ取れるが、今の僕には構ってる余裕がない。


「なんで、山口と歩いてたの。」


誘導尋問する余裕もなく、ダイレクトに確認したかった事を尋ねた。


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