この恋が実るなら
「なんで…知って…」
「2人が一緒に歩いてるところを、見たんだ。」
「今日はご飯に誘ってもらったから…」
「誘われたら、誰にでもついてっちゃうんだ、寧々は。」
いつもより口調がキツくなる。
「え、誰でもって、山口くんはチームメイトだって蒼一郎さんもよく知ってるでしょう?」
「山口が寧々のこと好きだって、知ってるんだよ!」
「え、何言ってるの、蒼一郎さん訳わかんない。どうしちゃったの?」
煮え切らない思いで、寧々の体を壁に押し付け、唇を強引に塞いだ。
こんな事をしたのは初めてだ。
寧々は僕から離れようと胸を押し返してくるけど、僕も力を緩めない。
さらに深い口づけをしようと体を押し付けて寧々の顔を見ると…
そこには戸惑いと恐怖で目を見開いて涙を溜めている彼女がいた。
僕は、何を、してるんだ。
ハッと我に返って、体を離した。
寧々が小さく震えながらその場にしゃがみこむ。
「今日は、帰って…。」
俯いたまま小さく呟く彼女の言葉に、従うしかなかった。
「ごめん…。」
それ以外の言葉を何も思いつかず、それだけ言って玄関を出た。