この恋が実るなら
【決心】
すれ違いと仲直り 寧々side
遠ざかる足音を聞きながら、玄関にしゃがみ込んだままだった私はフラフラと立ち上がった。
ガチャンと鍵をかける。
さっき起こった出来事が、どこか現実味がなくてぼんやりする。
いつも私の気持ちを優先させてくれて、気遣ってくれる蒼一郎さんのあんな姿を見るのは初めてで、正直受け止めきれていない。
そりゃ男の人だし、ああやって乱暴になる事だってあるだろうに。でも、やっぱりいつもの優しい蒼一郎さんとは結びつかない。
金曜日、指輪も受け取らずに帰ってしまった事を怒ってるんだろうか。
プロポーズはとても嬉しかったし、私だって、この先ずっと蒼一郎さんと一緒いられたら幸せだな、と思っていた。
でも、引っかかってるのはやっぱり海外赴任の件だ。
こんな大事な話があるなら、もっと前から相談してほしかった。相談されたって、私は蒼一郎さんが決める事なら応援するに決まってる。
でも、今このタイミングで、結婚してフランスか、離れ離れになるか、という二択として突きつけられるなんて思ってもみなかったから、戸惑って当然だ。