この恋が実るなら
唇がそっと離れると、蒼一郎さんが鞄の中から、見覚えのある小さな箱を出す。
「今度は、はめてくれる?」
うん、と頷くと、蒼一郎さんは私の薬指にそっと指輪をつけた。
「細かいことは、これから一緒に考えていこう。
もっと早く、海外赴任の事を打ち明けなかったのは、寧々がそれを聞いて離れていってしまうのが怖かったんだ。
ごめん。
でも、これからは何でも、最初から相談する。一緒に、生きていきたいから。」
「はい、そうしてください。」
そう言って、ちょっと蒼一郎さんを睨んだ。
2人で笑い合っていたところで、コンコンとノックが聞こえた。
「ちょっとお二人さん、話は終わったかしら〜?お邪魔しないって言っといて申し訳ないけど、どうしても取りに入りたい書類があるの。」
「陽子さん、ごめん!開けていいから。」
蒼一郎さんが声を掛けると、陽子が遠慮なくズカズカと入ってきた。
「その様子だと、丸く収まったみたいね。よかったわね〜、吉川さん。」
「はい、おかげさまで。」