この恋が実るなら


今日もぼんやり一人で公園でご飯を食べてたら、山口さんがやってきた。


「あれ、一人?寧々さんは?」


これまで、こんなに彼の口から聞く『寧々さん』が辛く聞こえることがあっただろうか?


「今日は、課長に話があるとかで、お昼ずらして取ってましたよ。」


どかっとベンチの私の隣に腰を下ろし、コンビニの袋をガサガサと漁っておにぎりを取り出す。

やっぱりいつものツナマヨだ。


「俺さ、来月からチームリーダーに昇格だって、内示あった。他にも2人いるみたいだけど。」


と言って、あ、これまだ公表されてないから、内緒な。と人差し指を口に当てる。


「でさ、正式に、昇格したら、伝えようと思って。俺の気持ち。」


ついに来たこの瞬間。
全てが凍りついたように温度を失っていく。


山口さんは、寧々さんに告白するんだ。一人前になったらって、前から言ってたもんね。


笑えない。



笑えないよ…。



良かったですね、って。
頑張ってくださいね、って。


笑顔で、言わなきゃいけないのに。





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