この恋が実るなら


「そっ…か。きっと、伝わりますよ。山口さんの気持ち。」


俯いたまま、何とか言った。


「おぅ、全部、藤谷のおかげ。ありがとな。」


山口さんの、大きくて優しい掌がポンポンと私の頭を撫でる。


ペットボトルのお茶を飲みながら、二つ目のおにぎりを頬張ってる山口さんの横顔を盗み見た。


大好きな人。


この人の心の中には、いつも寧々さんがいて。この人の目には、いつだって寧々さんが映っていた。


私じゃ、ない。







これ以上ここにいたら、泣いてしまいそうなので、バッグに残りのサンドイッチと野菜ジュースを詰め込んで、オフィスに戻ることにする。



「山口さん、昇格、おめでとうございます。うまく、いくといいですね。」


別れ際に、持ってる力を振り絞って笑顔を作った。


「お先に戻ります。」


そう言って、オフィスに向かって歩き出す。
涙が溢れる。止められないけど、今は、もう我慢しない。泣けるだけ泣いて、仕事に戻る前に化粧直しをしよう。




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