この恋が実るなら
寧々が席についた途端、実花が詰め寄った。
「先輩、どういう事ですか!?なんで教えてくれなかったんですか!?」
実花の目には涙がたまっている。
大好きな先輩の退職を寂しがる気持ちと、山口の恋が実らない事を知って、動揺を隠せない。
「ごめんね、実花ちゃん、黙ってて。私も寂しいけど、これが一番の選択だって思ったの。」
寧々は優しく諭すように実花の手を取った。
「私はいなくなるけど、これからは山口くんがチームリーダーとしてやっていってくれるから、安心して任せられるのよ。
それに、もうすぐ新入社員も入ってくるから、実花ちゃんは先輩として面倒見てあげてね。」
寧々の目も涙で潤んだ。
「でも、山口さんが…」
これまで自分の気持ちを犠牲にしてまで応援してきた山口の恋を思うと、実花は居た堪れない気持ちになる。
山口の方へ目をやっても、相変わらず穏やかな表情で宴会を楽しんでいるようだった。