この恋が実るなら
会の最中、何人もの同僚が寧々のところに挨拶に来た。
みんな寧々の退職を惜しんでいるようだ。
そんな寧々を横目に見て、実花はいつか自分もあんな風にみんなに頼られる、退職を惜しまれるような存在になれたらいいな、と思った。
寧々の周りが少し落ち着いたのを見計らって、山口が近づいてくる。
実花は心配そうな表情でそれを見守った。
「寧々さん、ちょっといいですか?」
ー寧々さん結婚するってわかっても、やっぱり山口さんは告白するのかな。
胸がギュっと苦しくなる。
「藤谷、ちょっと寧々さん借りるね。」
そう言って、山口と寧々は部屋の外に出た。
実花は、何が起こっているのかを考えながら、大きくため息をついた。
ところが、2人はすぐに戻って来た。
寧々は実花の隣に、山口は自分の元いた席に着いた。
「実花ちゃん、この後、ちょっと付き合ってほしいところがあるんだけど、時間大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です。」
不思議そうな顔で答える実花を見て、寧々は嬉しそうに微笑んだ。