この恋が実るなら
「さっき連絡があって、実花ちゃんと山口くんが出発を見送りに来てくれるって。」
山口のことは、寧々をめぐって恋のライバルとなるところだったけど、結局献身的に彼に寄り添っていた実花ちゃんに恋したらしい。
あちらも相当仲良くやってるみたいで何よりだ。
結局最後の最後まで寧々は山口の気持ちにはこれっぽっちも気づいてなくて、自分が応援していた実花の恋が実ったことを殊更に喜んでいる。
寧々のこういうお節介なところも、可愛いと思う。
「どうしよう、そろそろ出国検査入らなきゃいけない時間だけど・・」
出国検査場の前で二人を待っていると、遠くから二人の男女がこちらに向かって走ってくるのが見えた。あの二人に違いない。
僕たちのところまでやっと到着した二人は肩で息をして、だいぶ走ってきたことを物語っていた。
「寧々さん、すみません。駐車場が全然空いてなくて・・探してたら遅くなっちゃって・・。」
「そんな、全然。こうして見送りに来てもらえただけでありがたいよ。出発前に会えてよかった・・。」
出発準備の時も、家族にいってきますと言ってきた時にも涙を流さなかった寧々が、今ようやく目に涙をためて唇を震わせている。
「もう、寧々さん、泣かないでくださいよぉ~。私まで涙出ちゃう~。」
泣いて抱き合っている女の子二人を横目に、山口に声をかけた。
「実花ちゃんと、仲良くね。向こうにいる間に、実花ちゃんと遊びにおいで。」
そう言うと、少し挑戦的な目で
「寧々さんのこと、大事にしてくださいね。」
と言う。
「当たり前だ。」