この恋が実るなら

「なんでマレーシアなんですか?寧々さん、旅行行くんですか?」


「ううん、ほら、金曜日に会った吉川さんがね、明日から出張で行くから、お土産何がいいかって。」


うーん、と考えて、


「マレーシアのお茶、美味しいって友達言ってましたよ。それに、ドライフルーツとか?

寧々さん、もう付き合うことになったんですか?いいなぁ〜!」


内緒話のはずが、実花ちゃん、ちょっと声の音量上がってるって!
慌てて人差し指を口に当てる。


「まだそんなんじゃないけど、その方向で、少しずつ距離を縮められたらいいなって思ってるだけ。

そっか、じゃお茶とドライマンゴー頼んどこう。」


うふふ、お昼が待ちきれない!と肩をすくめて笑った実花ちゃんが、また自分のパソコンのスクリーンに向き直った。


どさっ。


突然私のデスクに分厚い書類が置かれたので、びっくりして見上げると…


「必要なものは全部揃えました。13時の打ち合わせの直前に準備したいこともあるので、早いけどお昼行ってきます。」


今日はじめてまともにしゃべってくれた、相変わらず不機嫌な山口くんに戸惑いながらも、


「あ、また今日もあそこ行く?」


と聞くと、


「今日はコンビニで済ませます。」


とこちらを向かずにさっさとオフィスから出て行ってしまった。


どうしたんだろ?

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