この恋が実るなら


スムーズに打ち合わせを終えて、クライアントを見送った。


「山口くん、ありがとう。打ち合わせすっごくスムーズだったね。もうチームリーダー、任せられそう。」


そう声をかけると、山口くんはホッとしたようにため息をついた。


「とりあえず打ち合わせ終わったし、あとは作業進めるだけだから、ちょっとコーヒーでも飲んでいこうか。」


「そうですね。」



なんか、山口くんの様子いつもと違うし、ちょっと話でも聞けるかな~なんて思いながら自販機のある休憩室へ向かう。



誰もいない休憩室へ入って、小銭を入れてコーヒーのボタンを押した。


ガチャン。ガチャン。


2つ缶コーヒーが落ちてくる。


「はい。お疲れ様。」


コーヒーをひとつ、山口くんに手渡す。
やっぱり、なんか元気がないように見える。



「山口くんさ、今日なんか調子悪い?何か悩み事なら、私でよければ話聞くよ。」


「え・・」


「あ、一応チームリーダーだしさ。仕事も、仕事以外のことも頼ってくれたらうれしいな、と思って。
余計なお世話だったらごめんね。いつもは穏やかな山口くんが、今日はイライラしてるみたいだったから。」


と少し戸惑った山口くんに、言い訳のようにそう言うと、少し迷ったような表情を見せてコーヒーを一口飲んだ後、山口くんが口を開いた。


「金曜日の急用って、何だったんですか。」


今日はじめて、目を合わせてくれた気がした。

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