この恋が実るなら
「えー、そっかぁ。ねぇねぇ、山口くんから見て実花ちゃんってどう?可愛いよねぇ。ああいう子を彼女にしたら、きっと幸せよね。」
なんなら私が彼氏になりたいな〜なんて冗談を言って笑ったら、今日一番の不機嫌さを醸し出した山口くんが、残りのコーヒーを一気に飲み干した。
「藤谷は、ただの後輩ですよ。」
あ、やばい。ホッとして調子に乗ってしまった。何かいけない事を聞いてしまった?話題をそらさなければ。
「そっか、そっか。。いや、山口くんもさ、仕事だいぶ任せられるようになってきたし、自信持って大丈夫だから。今のままの山口くんでいいからさ、その調子で頑張って。」
仕事のことで悩んでるのかな、と思ったけど、違うのかな。
空になった缶をゴミ箱に投げ入れる山口くんを見つめる。
「近々またチームのみんなで飲みに行こっか。仕事もいろいろストレスたまる事もあるだろうし。ぱーっと飲もう!みんなの都合のいい日、聞いといてくれる?」
何だかやっぱり機嫌の悪そうな山口くんに耐えられず、そう言ってそそくさと休憩室を後にした。
悩み聞くとか言っておいて、頼りにならない先輩だな、私。
歩き去る私の背中を、悲しい顔でため息をつきながら山口くんが見つめているとは全く気付かなかった。