この恋が実るなら

ライバル



今日は、新しく赴任してきた佐々木さんの歓迎会だ。
会場はいつもの居酒屋。
みんなも仕事を定時に終わらせて、すっかり飲み会モードだ。


17時半を過ぎて、パラパラとみんな店に移動し始めていた。
デスクのモニターごしに寧々さんを見ると、もう終わってるみたいだ。
帰り支度をしている。



「寧々さん、もう終わりましたよね。直接行きますか?」



すると急に慌てて、バッグを肩にかけて、


「あ、ごめん。今日ね、ちょっと用ができちゃって。行けなくなっちゃったんだ。」


午前中に話した時には行くことになってたのに。
急用って何だろう。
寧々さんと飲めるのを楽しみにしてたから、ちょっと顔をしかめた。


俺の気持ちなんて知る由もない寧々さんはこう続けた。


「実花ちゃんがさ、お家、駅から少し遠いから、帰り送ってあげてくれる?」


うちのチームで一番若い藤谷が、俺のことちょっと気に入ってるのは何となく気づいてた。
いつも俺と話す時、顔が赤いもんな。
かわいいけど。


きっと寧々さんだってそれに気づいてるはず。
なのにこんなこと頼んでくるのは、俺のことなんて恋愛対象に思ってないんだろう。
と思うと胸がチクリと痛む。
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