この恋が実るなら
【吉川蒼一郎side】
恋心
以前に店にやってきたその子は、熱心に店内のインテリア雑貨を見て回っては一つひとつ手にとっては戻し、手にとっては戻し、品定めしていた。
直感でほしいものを見つける僕にとっては、そんなに迷うこと自体が不思議で、気づいたら話しかけていた。
「今日は何をお探しですか?」
自分の世界に入り込んでたらしく、驚いてびくっと肩を揺らした彼女が振り返る。
「ごめんなさい。驚かせましたか。」
「いえ、集中してて。すみません。今日は、マグカップをスタックしておけるような棚を探してて。
棚でもいいし、ひっかけるフックみたいなのでもいいんですけど、ばっちりイメージに合うのがどれなのか、今考えていたところです。」
「どこに置かれる予定ですか?」
「キッチンのカウンターの上です。よくコーヒーやお茶を入れるので、すぐに手に届くところに置きたくて。」
なんとなく彼女のイメージはつかめたので、イメージにあうものを探してみる。
あ、そういえば倉庫に昨日届いたばかりで、まだ出してないマグカップスタンドがあったはず。