この恋が実るなら


「ちょっと、奥にも商品があるので、持ってきますね。少々お待ちください。」


そう言って、スタッフルームの陽子さんに声をかけた。


「陽子さん、マグカップスタンドって、まだ出してなかったよね?」


はいはいーと言って出てきた陽子さんは、マグカップスタンドを探している彼女を見て顔を緩める。


「なーんだ、寧々。来てたなら声かけてくれればよかったのに。」


「あれ、なんだ。知り合いだったの。」


「うん、学生時代からの親友よ。こちら、南谷寧々。すぐそこのWeb制作会社に勤めてるの。で、こちらが吉川蒼一郎さん。このお店の商品は彼がバイヤーとして卸してるのよ。」


陽子さんが手早く紹介してくれた。
南谷寧々さん、か。
可愛い人だと思ったけど、ご縁があったみたいだ。


「相談に乗っていただいて、ありがとうございます。あ、これすごくイメージぴったりです!

この子がうちに連れて帰ってって言ってるのが聞こえる。」


寧々さんは、ふふふと笑って、倉庫から出したばかりのマグカップスタンドを両腕に抱えた。



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