この恋が実るなら


リビングでは、蒼一郎さんがソファで雑誌を読んでいる。


「お風呂、お先に。」


そう言って覗き込むと、


「すっぴんの寧々も、可愛い。」


と抱きしめられた。


「髪、乾かさなきゃね。ここに、おいで。」

そう言って、自分の膝の間を指差す。
え、乾かしてくれるのかな。
私、こんなに甘やかされてばっかで大丈夫かしら。


おとなしく言われた通りに座ると、準備してあったドライヤーで優しく髪を乾かし始めた。


髪を触られるのって、こんなに気持ちよかったっけ。
蒼一郎さんの大きな手が、私の髪を梳いていく。


「寧々の髪、きれいだね。」


乾かしながら言うもんだから、ゴーゴーうるさくてよく聞こえない。


「え、何ですか〜?」


大きな声で返したら、ドライヤーのスイッチが切れた。


「はい、乾いたよ。寧々の髪、きれいだね、って言ったんだ。」


「ありがとう、ございます。」


蒼一郎さんに乾かしてもらった髪が、あったかくてサラサラと流れた。


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