この恋が実るなら
「山口さん、もしこの作業終わってたら、あと引き継ぎますよ。」
そう言って覗きこんでも、目は虚ろ。
「山口さーん!」
仕方ないので、ポンポンと肩を叩くと、ようやく気付いてくれた。
「大丈夫ですか?」
「え、あ、ああ。うん、大丈夫。ごめん、ぼーっとしてて。」
慌てて取り繕っても、抜け殻になってる事はほかのみんなにもバレバレだ。
気付いてないのは、ピンクのお花が飛んでる先輩だけ。
山口さんの事は、入社以来ずっと見つめてきた。
だから、彼がずっと誰を見ていたかなんて、ずっと前から知ってる。
もう。先輩はずっと色恋沙汰なかったのに、何でさっさと告白しなかったのか。
おっと、それは私も他人の事言えないか。
自分の好きな人相手に、こんなイライラするなんて。
でも、そんなちょっと頼りないところも好きだったりするのだ。