この恋が実るなら


「山口さん、もしこの作業終わってたら、あと引き継ぎますよ。」


そう言って覗きこんでも、目は虚ろ。


「山口さーん!」


仕方ないので、ポンポンと肩を叩くと、ようやく気付いてくれた。


「大丈夫ですか?」


「え、あ、ああ。うん、大丈夫。ごめん、ぼーっとしてて。」


慌てて取り繕っても、抜け殻になってる事はほかのみんなにもバレバレだ。


気付いてないのは、ピンクのお花が飛んでる先輩だけ。


山口さんの事は、入社以来ずっと見つめてきた。
だから、彼がずっと誰を見ていたかなんて、ずっと前から知ってる。


もう。先輩はずっと色恋沙汰なかったのに、何でさっさと告白しなかったのか。


おっと、それは私も他人の事言えないか。


自分の好きな人相手に、こんなイライラするなんて。


でも、そんなちょっと頼りないところも好きだったりするのだ。
< 87 / 147 >

この作品をシェア

pagetop