この恋が実るなら


「ほら、とりあえず、食べましょう!食べて元気出さないと!」


そう言って、おにぎりを差し出す。
山口さんの好きなツナマヨ。
味覚も子供っぽいな。


「あ、ありがと。」


素直におにぎりを受け取った山口さんが、ようやく食べ始めた。


それからは、たわいもない話で穏やかにお昼を過ごした。
ちょっとは気分転換に、なったかな。


「さぁ、オフィス戻りましょうか。」


そう言って立ち上がると、まだベンチに座ってる山口さんが私の腕を掴んだ。


「藤谷、ありがとな。」


不意打ちに、思わず顔が赤くなる。


「い、いえ。」


照れ隠しですぐに背を向け歩き出した。


今は、すぐに山口さんに私を見て欲しいとは、本当に思ってない。
山口さんは、自分の消化不良の気持ちにちゃんと向き合って、整理しなきゃ。
それができるまで、私が力になれたらいい、と思う。
それができたら、もしかしたら彼の想いが通じて、私から手の届かないところに行ってしまうのかもしれないけど。
それで、いい。


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