お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
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次の日。
私は会社近くの駅のロータリーにいた。
待ち合わせ場所はここを指定された。
会社の人間に見られそうだけど、外回りの帰りに通る道らしく、向こうが都合がいいらしい。
優菜は御曹司の顔を見たいと駄々を捏ねていたが、帰らせた。
断るのに、後輩を紹介するのっておかしいし。
そう、断るから会うのだ。
それ以上でも以下でもなく、これはデートでは……。
「桜子さん」
内心言い訳を連ねていると、背後から呼ばれてビクッと跳ねてしまう。
「と、智哉さん」
「すみません、驚かせて。待ちました?」
「いいえ、今来たところなので」
「よかった」と笑う。
上がる口角で覗く八重歯が幼く見えて少年のようだ。
きちっとスーツを着こなしているのとのギャップが眩しくて目を細めてしまった。
「車を止めているので行きましょう」
そう誘われて、後をついていくと黒塗りの高級車が止まっていた。
しかも、運転手付き。
さすが大企業の御曹司。
高級車にビビりながら、運転手に開かれたドアから車内に入る。