お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
そこからグレて、家柄にふさわしくなろうとしていた俺が道を外しかけているのに、誰も何も言わない。
やはり、俺は思っているほど、そんなに重要ではないらしい。
葉山の家のしがらみが嫌いだったのに、いざ期待されていないとなると落胆するなんて自分の勝手さに自嘲した。
「あー、どうしようかな」
公園のベンチに座って天を仰ぐ。
季節は晩秋。
木々の葉も散って、枯れ葉が名残惜しく枝で揺れていた。
高校も一、二年と真面目に通っていたから落第はしていないけれど、このまま卒業できるのか際どい。
このままニートってわけにもいかない。
金だけを無心するような男にはなりたくない。
だけど、どの道を選んで歩いたらいいのか俺には迷うほどの選択肢すらないのだ。
「自由にしろ」と投げられるのが一番困る。
そのもどかしさに呼応するように腹の虫が鳴いた。
「腹減ったな」
ケンカしたら、胃が空っぽになった。
とにかく将来のことは置いておいて、腹を満たすために近くのコンビニまで歩いた。
家の近所にあるコンビニは駅前とは違って広いものの混んでいない。
店の経営はやっていけるのかと他人ながらにいつも思う。
「いらっしゃいませ」
自動ドアから入ると背中まである黒髪を一つに括った女が挨拶してくる。
夕方のこの時間に店に来るとよくこの店員がいる。
年の頃なら俺と同じくらいで、おそらく高校生だろう。
俺はパンの売り場に行っていつもの『バターアンパン』を手に取る。
何だかんだで、いつもこれを選んでしまう。
パックの牛乳とを持ってレジに置いた。
レジにさっきの店員が入って、商品のバーコードを通していく。