お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~





「二百十六円です」



そう無表情で俺に告げた。



こいつはいつも愛想がない。


淡々と必要な作業だけして余分なものがない。



ロボットみてぇだな。


整った顔だけに表情がないとすごく無機質だ。



その時初めて名札を見た。ブラスチックの小さな板に『藤野』と書かれていた。



千円出しておつりを渡された。それを財布に入れた時、



「これ」



レシートと一緒に絆創膏を差し出してきた。



「は?」



俺は意味がわからず絆創膏と藤野という店員を交互に見る。



藤野は眉一つ動かさないまま、



「私、指がよく逆剥けするんで常備してるんです」


と俺を真っすぐ見て言った。



いやいや、違うよ。


なんでお前が絆創膏を常備してんのか訊いたんじゃねぇよ。




色々ツッコんでしまいそうになっていたら、藤野は軽く自分の唇の端を指でノックした。





「早く治さないとアンパン食べる時に沁みますよ」



その時、首を傾げる姿が少女が心配するような仕草だった。




< 102 / 105 >

この作品をシェア

pagetop