お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
大人びて見えていたが、この子は俺よりも年下なのかもしれない。
俺は迷いながらもレシートと一緒に絆創膏を受け取る。
ビニール袋を持とうとした手を見て藤野がさらに「あっ」と声を上げたからビクッと肩が震えた。
「これ、指にどうぞ」
擦りむけた指の分らしく、制服の胸ポケットから連なった絆創膏を出して二枚千切る。
どれだけ常備してるんだと呆気にとられつつ、差し出されたそれを受け取った。
「あ、ありがと」
自然と感謝の言葉が出ていた。
最近めっきり言っていなかった。
何かにつけ俺は衝突するほうを選んで、自分を傷つけようとしていたから。
驚くほど小さい声だったけど、彼女には聞こえたらしく、にこっと笑顔が返ってきた。
その瞬間、一気に血が昇ってくる感覚。
俺は慌てて店から飛び出していた。
走って走って、気づいたらさっきの公園に戻っていた。
「な、なんだ、あれ」
全速力で走ったから全身から汗が噴き出してくる。
わ、笑った。
あれだけいつも無表情のくせに。
控えめにだけど、花のような優しい笑顔だった。
被っていたニット帽を脱ぐ。
それでも、全然熱が逃げなくて、心臓がうるさいくらいに俺の中で鳴り続けていた。