お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
智哉に連れられてきたのは小さな料亭だった。
大通りから外れたそこは門構えは地味で小さいのに、入ると奥に長く作られている作りで通されたのはその一番奥の個室の座敷だった。
智哉は鳴れた様子で仲居さんに注文する。
私は料亭なんて初めてで大人しく座布団の上に座っているだけだ。
「お口に合いますか?」
「はい、とても美味しいです」
運ばれてきた和食を口に運んで頷く。
久しぶりにちゃんとした和食を食べた。
この間の見合いの席では昼間の短時間だからお茶とお菓子だった。
それもおいしかったけど、このだしの味や繊細な盛り付けに感動してしまう。
日頃口にするコンビニのサンドイッチや菓子パンも手軽で助かるが、やはり日本に生まれたからには原点回帰というか、やはり深みのある和食が一番身体に馴染む。
はっ、いけない。本題に入らなければ!
身体に染みるほどおいしい茶碗蒸しについ夢中になりかけて我に返る。
私は匙を置いて姿勢を正した。
「あ、あの、智哉さん」
「はい?なんでしょうか」
無垢な笑顔を返されて、言葉が詰まる。
でも、言わなければどんどん言い出しにくくなる。
「この、お見合い、私……その……」
「『お断りします』ですか?」
そのままの笑顔でずばり言い当てられて声が引っ込む。