お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
デートと呼ぶのは癪だが、特に浮いた話もない私は休日の予定も比較的自由だ。
さっさと会って帰ってこようと決めた。
「土曜日、無難に映画に行こう」
と誘われた。
私も映画鑑賞が趣味だったし、何より映画を見ている間は智哉と会話しなくて済む。
気軽に了解を出した。
『どれ見る?』
前日の金曜日、智哉からのメッセージが携帯に入ってくる。
「えっと……」
本当は見たいものは決まっていた。
洋画のSFホラー。
未知の生物が人間を食らっていくという何ともグロイ内容だった。
普段、キラキラやふわふわといった形容詞がモチーフのデザインばかりしているからか、たまに攻撃的な映画を見たくなるのだ。
これはシリーズ化されて、これで三作目。
もちろん、私は全部見ている。
これは二年ぶりの新作で、楽しみにしていたのだ。
でも、これは女としてNGよね。
達彦はこういうグロイものが駄目で、普通のアクション映画やハートフルコメディを好んだ。
私は惚れていた手前、達彦の趣味に合わせた。
もちろん、アクションもコメディも好きだからいい。
だけど、自分の意見を言ってこなかった気がする。
それは、私のほうが好きだったからだ。
告白したのも私からだった。
達彦は見目が端麗で周囲の女性社員からモテた。
それが、バレンタインでチョコを渡した時、
「これって本命?」
と聞かれた。
義理だと答えて誤魔化す前に、そもそも恋愛事に慣れていない私は顔が爆発したように熱くなって、見事にバレてしまった。
「いいよ、付き合おうか」
達彦は笑ってあっさりとOKを出した。
どうしてかはわからない。
私はいつも達彦の前でも恥ずかしくて、黙ったままが多かったし、他の女子みたいに可愛くアピールもできなかったのに。
だからその日は人生で一番幸せだと思えるくらい嬉しかった。