お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
『俺はこれ見たいんだけど』
私が返事を止めていたら、智哉からまたメッセージが入る。
その映画のタイトルが私が見たいものと同じだったから目を丸くする。
『私もそれが見たい』
『マジで?じゃあこれにしよ。席は取っておく。真ん中あたりでいい?』
『うん、ありがとう』
『明日は可愛くしてこいよ』
『なんで?』
『俺のために決まってんだろ』
『いやです』
私が返すと智哉がガーンというスタンプを返してきた。
あの不遜な態度からは想像できない癒し系クマのゆるキャラだったから吹き出してしまった。
そこで、何だかんだで自分は智哉とのやり取りを楽しんでしまっていることに気づいて首を横に振る。
駄目駄目、こいつは権力のために私と結婚したいだけよ。
そんな男に絆されてたまるものか!
私は『おやすみ』とスタンプを押して携帯を離した。
達彦はマメなほうではなかったから、返信をいつも待っていた。
待った時間を埋めるように私は仕事に没頭していた。
今思えばなんて不毛な関係だったんだろう。
待っていれば、彼を想っていれば大きな愛で返ってくる。
妄信的にそう思っていた昔の自分が今では気の毒な痛い女でしかなかったと認めることができる。
ただ、客観視できるくらい達彦とのことは傷が癒えているのかと思うと、少し心が軽くなって私は早めに眠りについた。