お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
次の日、私は鏡の前で自分の姿をまじまじと見つめた。
アイロンで肩から下の髪をゆるく巻いて、少し甘めに入れたピンクのチーク。
その分、口元はコーラルピンクで抑えめにした。
白いふわりとしたニットと上品な薄いグレーのフレアスカートは可愛く一目ぼれしたものだ。
可愛くという要望に応えた気はないけど、粗がある状態で出かけたくないからだ。
「別にへんな格好して馬鹿にされたくないだけだし!」
一応金持ちの坊ちゃんと並んで歩くなら、それなりの格好をしないと惨めな気持ちになるのはこちらのほうだ。
誰にでもなく言い訳をしていると携帯が鳴った。
『着いたから下で待ってる』
智哉からだった。
私は慌ててベージュ色のコートを羽織って鞄を持つと、玄関に鍵をかけた。
四階建ての小さなマンションの三階に私の借りている部屋がある。
エレベーターがちょうど行ってしまったところで、階段のほうが早いかとそちらを選んだ。
七センチヒールでもたつきながら駆け降りると、入り口の斜め前方に白いセダンとともに智哉が立っていた。
細身のジーンズと紺色のショートコート。
今まで見てきたのがスーツ姿だっただけに、カジュアルな恰好がすごく新鮮だ。