お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「おー、おはよう。って言っても昼か」
「お、おはよう」
いつもセットしてある髪も今日は自然に下ろされていて、年齢もぐんと若返る。
妙にドキドキして私は視線を明後日へと逸らした。
「き、今日は運転手付きじゃないのね」
「いくらなんでも休日まで運転させねぇよ」
いつもの黒い車は社用車で、この白いものは智哉の愛車らしい。
こちらも見たことのある高級車のエンブレムが輝いていた。
どれだけ金持ちなんだ。
私が固まっていると、智哉が助手席のドアを開けた。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
エスコートに慣れていないからぎこちない動きで車に乗り込む。
私がシートベルトをしている間に智哉も運転席に乗り込んできた。
彼もシートベルトを締めて、車がゆっくりと発進する。
エンジン音だけの車内でちらりと智哉を盗み見る。
運転をする横顔は鼻梁が高く、精悍だ。
運転もうまい。
恋人がいないわけないと思うんだけど。
お見合いを受けても恋人がいないというわけではない。
でも、彼女なりがいたらすぐに断るはず。
それこそ認めてもらえないから、私を隠れ蓑にして認めさせるよう何か画策しているとか?
私がいくら考えても答えが出るわけがないけれど、考え出すと気になって止まらない。
眉間に皺を寄せて考えていると、隣からクスッと笑い声が聞こえてきた。
智哉を見ると、おかしそうに目を細めている。