お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「な、何?」
「いや、ちゃんと可愛くしてくれてんじゃんと思って」
ニヤニヤと口角を上げる智哉に私の顔が一瞬で真っ赤になった。
「なっ!いつもこのとおりよ!」
「はいはい、いつも可愛いですね」
「ち、ちがっ!そういう意味じゃない!」
車内が一気ににぎやかになる。といっても私が一人で喚いているのだが。
「着物姿も綺麗でよかったよ」
ふと優しげな表情で言われて、動きが止まる。
褒められ慣れていない私はどう反応したらいいのかわからない。
「こう貫禄があってさ。着物に負けてないって感じ」
……そう、こういう奴でした。
純粋に褒められたと思っていた私は少しでも照れたことを後悔した。
「悪かったですね。どっしりと貫禄あって」
「何が?葉山の嫁はそれくらいでちょうどいい。ばあさんはそういう目利きはあるんだ」
そう言う智哉は悪気がない様子だから本気で思っているようだ。
つまり、私は嫁に適しているということ?
まるで、智哉本人もそう思っているみたいな。
そもそも、私と結婚になっても別にいいとさえ言っていた。
あの時は冗談だと思っていたけれど、彼にとっては結婚は本当に自分の意思ではなく、社長になるための道具なのかもしれない。