お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
私は絶対嫌だけどね。
智哉の社長への道に立てられた墓標になりたくない。
やはり、自分が惚れた相手と一緒に生きていきたい。
それにしても、前からよく『ばあさん、ばあさん』言うわね……。
母親が早くに亡くなったって言ってたけど。
「意外とおばあちゃん子なんじゃないの?」
「はぁ?なんつった?」
ポツリと呟いたら、智哉の耳が拾ったらしくドスの効いた声を出された。
図星だったのか、心外だったのか。
こちらばかりが振り回されるのは癪だったから、私の気分が少し晴れた。
「地獄耳って言ったの」
「どこがだよ!?」
「ちょっと!ちゃんと前見て!」
そんなこんなで終始ギャーギャー言い合っているうちに目的地に到着した。
映画館のある施設の駐車場に停める。
「本当によかったのか?」
映画館前まで来たところで智哉が急に不安そうな声を出すから何事かと仰ぎ見る。
私が七センチのヒールを履いても彼は軽く見上げないと目が合わない。
達彦はここまで身長なかったもんね。
だから、女で高身長な私は履く靴にも気を付けて、いつもローヒールのパンプスを選んでいた。
天は智哉にどれだけ多くのものを授けたのかと思うくらい、ここまで揃っていると驚きを通り越して感嘆してしまう。
「な、何が?」
「いや、映画さ。俺が決めたようなものだろ。シリーズものだし、グロイし。無理矢理合わせたんじゃないのか?」
「いや、私もこれ見たかったからちょうどよかったんだけど」
「マジ?それならよかった!」
また、あの屈託のない笑顔を浮かべる。
笑うと本当に少年のように可愛い。