お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
いや、可愛いってなんだ!
ほわっと見惚れていた自分を吹き飛ばすように首を横に振る。
映画館独特の少し照明を落とされたエリアに入ってすぐの発券機で予約したチケットを発行した。
「これさ、二年ぶりだろ?すごく気になるところで終わってて、どれだけ待っていたことか」
「そうそう、主人公が死ぬのか死なないのかで終わられると気になって。どれだけ引っ張るのって感じ」
「大体、敵が強すぎるんだよなー。まぁそこをひっくり返す人間の強さっていうのがまた面白いんだけど」
「そうなの!」
こんなにSFホラーをわかりあえる人間がいなかったからついテンションが上がってしまう。
大体、同性は怖がって見ないし、男性でも好き嫌いが分かれる。
第一女でホラー好きはどちらからも引かれやすいから必然的に隠していたのだ。
思わぬところでテンションが上がったところで智哉が売店を指さした。
「ちょっと、時間あるけど何か飲み物買う?」
「うん」
車の中で騒いだせいか喉が渇いている。
二人で列に並んだらどんどん人が捌けていって、すぐ私たちの順番になった。
「ご注文はお決まりですか?」
「「コーラMサイズで」」
照らし合わせたように声が重なったので、二人同時に顔を見合わせる。
見事にシンクロしてしまうと恥ずかしくなる。
店員は全く気にせず無表情でメニューの一角を手で示した。
「お得なセットだとポップコーンもついてきますが」
「ポップコーンはいいか」
「うん、食べながらだと集中できないしね」
私は映画を観る時、飲み物のみ派なのだ。
智哉もそうだったらしく、彼が二人分支払いを済ませると飲み物だけを持って列から離れた。
「あ、お金」
「いいよ、俺が誘ったし」
「でも……」
「女にデートで金出させたことねぇの。俺は」
そう言ってさっさと映画館に入っていく。
財布を持ったまま放置された私は慌ててその後についていった。