お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
「別に。実際あんなのと一緒に飯は勘弁だったから。マウント女と不毛な会話するくらいなら帰ってカップ麺食って寝る」
「確かに」
明け透けなく言い放つ智哉に思わず破顔した。
クスクスと笑っているうちに映画館は見えなくなっていて、エレベーターの前まで来ていた。
軽く振り返るともう二人の姿も見えない。
「もう手いいわ。ありがとう」
「俺は別にこのままでもいいけど」
「私はよくない」
ふざける智哉から無理矢理手を引き抜く。智哉は「冷たいなー」とわざとらしく声を上げる。
いやいや、何だかんだで絆されている気がするわ。
さっきありさから庇ってくれたのもあって、ちょっと「優しいな」と思いかけていた。
こいつは社長の座に就きたくて私を利用しようとしているだけなのよ!ちょっと優しいところを見たからって……
「何食う?」
「え!?」
智哉が覗き込んできたから思わず飛びのく。
いけない、イケメンは間近で見るとさらに美しくて逆に今は毒だ。
飛びずさった私に智哉は「そんな驚くことないだろ」と嘆息を漏らした。
「だから、何食う?晩飯」
「え?えっと、焼肉とか……」
つい頭にぱっと浮かんだものを答えていた。
仮にもデートなのに、色気がなさすぎる。
女としての意識のなさを自覚した瞬間、思い直した。
『嫌になったらドン引きするような素の部分見せたら向こうから断ると思うし』
優菜の言葉を思い出した。