お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~
門前払いするには確かに恩がある。
達彦以来男が入っていない自分の部屋を思い浮かべた。
帰って掃除しよ。
決して、智哉のためではない。
他人様を上げるのに失礼がないようにという体面だけだ。
「夜遅いとコーヒーは駄目よね」
「何だかんだでわりと楽しみにしてますね」
「そ、そんなことないわ!」
ギャーギャー言いながら会計を済ませて店を出た。
楽しみになんてしてない!
ムキになって否定する。
だって、私は好きじゃないもの。
感情がせめぎ合って振り子みたいに揺れ動く。
恋をすると気分がどうしても上がり下がりする。
そんな不安定さは仕事の邪魔だし、私生活にも響く。
だから、もう恋愛とか結婚はいいの。
智也のことを振り払うように会社に戻って自分のデスクに向かう。
「藤野」
着席する前に村瀬課長に呼ばれた。
「何ですか?」
「ちょっと、こっち来い」
奥にある会議室へ先に歩いていく課長。
その顔色からいい話ではないことはわかった。
今受け持ってるリップのデザインのことかな。
大体当てはまりそうな件を想像しながら、後についていった。
実際は、私の想像なんてさらに上を行く事件で、聞き終わった時には頭の中が全て真っ白に塗りつぶされていた。