お見合い愛執婚~俺様御曹司に甘くとらわれました~


門前払いするには確かに恩がある。



達彦以来男が入っていない自分の部屋を思い浮かべた。




帰って掃除しよ。



決して、智哉のためではない。

他人様を上げるのに失礼がないようにという体面だけだ。



「夜遅いとコーヒーは駄目よね」

「何だかんだでわりと楽しみにしてますね」

「そ、そんなことないわ!」




ギャーギャー言いながら会計を済ませて店を出た。




楽しみになんてしてない!



ムキになって否定する。



だって、私は好きじゃないもの。





感情がせめぎ合って振り子みたいに揺れ動く。


恋をすると気分がどうしても上がり下がりする。


そんな不安定さは仕事の邪魔だし、私生活にも響く。


だから、もう恋愛とか結婚はいいの。


智也のことを振り払うように会社に戻って自分のデスクに向かう。



「藤野」



着席する前に村瀬課長に呼ばれた。



「何ですか?」

「ちょっと、こっち来い」



奥にある会議室へ先に歩いていく課長。


その顔色からいい話ではないことはわかった。



今受け持ってるリップのデザインのことかな。



大体当てはまりそうな件を想像しながら、後についていった。




実際は、私の想像なんてさらに上を行く事件で、聞き終わった時には頭の中が全て真っ白に塗りつぶされていた。






< 43 / 105 >

この作品をシェア

pagetop